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「今、私が会いたい人」時間と手間をかけた作品で幸せを届けたい|革職人・KIKUCHI LEATHERさん
こんにちは。クリーマで経理を担当している金井です。
2023年10月に入社した私ですが、初めてCreemaを利用したのは学生の頃。お気に入りのスマホケースを集めたり、仲のいい友人に渡すちょっとしたメッセージカードを購入したりしていました。
今回は、Creemaユーザー歴10年の私が前々から気になっていたKIKUCHI LEATHERさんをご紹介させていただきます。
KIKUCHI LEATHERさんの作品はシンプルで洗練されたデザインで、ありそうでなかった素材や設計、そのすべてをお一人で生み出されているところに魅了されました。どういった思いで作品作りをされているかぜひ直接伺いたい!とKIKUCHI LEATHERの菊池さんにインタビューさせていただきました。
実際にお話を伺って、目の前で制作の様子を拝見した魅力を余すことなくお伝えできればと思います。
革職人になったきっかけは「欲しい財布がないなら自分で作ろう」と思ったこと
「私は高校生の頃にプレゼントでもらった財布を12〜3年ずっと大事に使っていました。長い間愛用していたのですが、経年劣化により内側の生地がボロボロになったり、糸がほつれてきたり、小銭入れの底部分に穴が開くなど当然ところどころ傷んできました。
その都度、自分でできる範囲の補修をしながら使っていたのですが、ついにもうこれ以上は使えないという状態になってしまい、新しい財布を買う決断をしました。
特段、財布にはこだわりはないつもりで、お店に行って何か気に入ったものがあればそれを購入すればいいと思っていたんです。でも、いざどれか一つに絞って買おうと思うと「これだ」というものが見つからず、結局買わずじまいで店を後にしました。その後も財布を買おうと色々なお店に立ち寄ってみたものの、欲しいものが見つからず、そんな状態が2ヶ月ぐらい続いていました。
ある日、いつものように店頭に並ぶ財布を眺めていた時に、ふと「これだ!という財布がないのならば、自分で作ってしまえないだろうか」という発想が生まれたんです。
それまで私には物は“買う”ものという選択しかなかったのですが、そうではなくて“自分で作る”という選択が生まれた瞬間でした。」
——自分で作ろう!から始める、というのはなかなか誰でも出来るものではないと思いますが、もともと身近にものづくりをしている人がいる環境や、ものづくりを学んできた背景があったのでしょうか?
「ものづくりに関しては全くの素人でした。まず何から始めたらいいのかを考え、調べてみると、どうやら「レザークラフト」という皮革を素材に用いた手工芸があり、お財布などの革製品を自分でも作れることを初めて知りました。
もともと図書館で本を借りて読む習慣があるので、まずは図書館に行ってレザークラフトに関する書籍を15冊ぐらい読んで知識をインプットしました。
そして、必要な道具を揃えて基本的な技術を徹底的に叩き込んで習得しました。もちろん初めはうまくいかないことも多かったのですが、まずは比較的簡単なコインケースやポーチ、キーケースやパスケースなどを制作し、徐々にアイテムの幅が広がり、最終的に自分の望む財布を制作するまでに至りました。」
常識に囚われず、自由なものづくりを大切に
——今もすべての工程をお一人で制作されていると伺いしました。そのこだわりや、ものづくりの中で特に意識されていることや心がけていることを教えてください。
「私は、ただプロダクトを生産して売るためだけに仕事をしているのではなく、自分の仕事の先に必ず使う方がいて、そういった方々の存在を決して忘れないよう意識して仕事をしています。
だからこそ、一つひとつのご注文を大切にし、丁寧に時間と手間をかけ、手にした方が少しでも幸せな気持ちになっていただけるるよう、力の出し惜しみをしないことを心がけています。
また、「ステッチのカラーを変えたい」「サイズを少し変えたい」といった、お客様のちょっとしたご要望にも出来るだけお応えしたいと思っています。
本来ものづくりは自由であっていいはずです。こうでなければいけないとか、意識的であれ無意識的であれ、油断すると既存の常識に囚われがちになってしまいます。新しいアイデアやデザインが生まれるように、そういったものに囚われないようにすることも大切にしています。」
日々の制作活動が技術や知識、アイデアの更新作業という感覚だと話す菊池さん。ミリ単位の調整も厭わないという妥協のない姿勢から、作品を手にした方を思う気持ちを感じました。
制作工程を見学させていただきました
今回は特別にレザースリーブケースの制作を見学させていただきました。本来はもっと複雑な工程になるのですが、ポイントだけご紹介させていただきます。
1、素材となる革を選び、パーツごとに裁断
アイテム毎に型紙をオリジナルで作成していらっしゃるそうです。今回は短時間でご紹介できるよう、比較的工程の少ないiPad用のスリーブケースを制作いただきました。スリーブケースは4パーツ+芯材2枚ですが、長財布だと30パーツぐらいになるそう。
2、革を漉いて厚みを調整
革漉き機を使い、革の厚みを調整します。
重ね合わせる部分を両面同じように漉きます。部分によって厚みが異なると綺麗な仕上がりにならない、大事な作業です。
3、裏地を縫い付ける
表革と裏地を縫い付けます。裏地には触り心地がよく、アイテムにもやさしいスエード素材を採用しています。
仕上がりに張りを出したり、補強や形崩れ予防の為の芯材を仕込みます。
4、両面を縫い付けて成形
仮止めをして、革を張り合わせてミシンで縫製します。一つひとつ手作業なので、手間はかかりますが、だからこそ「ステッチの色を変えたい」という要望にも柔軟に対応できます。
5、手縫いで仕上げる
補強のために最後は手縫いで仕上げていきます。
6、ウェイトを乗せて形を整える
革が馴染むようにウェイトを乗せて形を整えます。
7、完成!!
革製品の制作工程を拝見したのは初めての経験でした。工程は想像していたよりも複雑で、改めてプロフェッショナルな技術力と細部に至るまでのこだわりを感じました。
今回使用していた馬革は手触りが柔らかで心地よく、完成したスリーブケースは落ち着いた雰囲気がとても素敵な作品でした。
思考をやめずに考え続けることでアイデアは生まれてくる
——工房に並べられているたくさんの開発中の作品を拝見させていただきましたが、新しい作品のアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
「一つの要因ではなく、様々な要因によって新しい作品を作り出します。例えばお客様や知人から、「こんなものが欲しい」「使っていたものが壊れたので、新しく作ってほしい」とか、そういったご要望にお応えして制作したものをそのまま定番商品にしたりすることもありますし、私自身が「欲しいもの」をストレートに形にする場合もあります。
また、普段からものづくりのヒントになるような手掛かりを模索するよう心がけています。使う人がどのように扱うのか、使いやすさや、手触り、質感、重さなど、感覚的な側面も非常に大事にしています。たくさんある既存の物をしっかりと観察することです。「何が足りないのか」「実用的だが美的観点からほど遠いのはなぜか」「この部分は良いがここはなぜ妥協してしまっているのか」「もっと理想的なものはないのか」……
異なる二つの要件を同時に満たすことはできませんが、妥協して間を取ってしまうと、つまらないものになってしまいます。それでも糸口を探って思考をやめないことが重要だと思っています。」
——菊池さんならではだと感じたのが革製の置き時計でした。こちらの作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
「素材の革を見た時にインスピレーションでこの革で時計を造ったら面白いんじゃないかと感じ、そこから一気に作りました。革自体が良いのでデザインは特に考えず、これ以上何かを足すことも引くこともできない完成された形だと思っています。革という素材は経年変化するものですが、その時間を自ら刻むという意味でも革の時計というのは他の素材にはない独特な存在感だと思います。」
インタビューを終えて
「とにかく作りたくてしょうがない。」
子どもの頃夢中になって遊んだ感覚に近いという尽きない好奇心と、生活のすべてからヒントを得てデザインやアイデアを形にする妥協のない姿勢。真剣な表情と真っ直ぐな言葉がとても印象的で、ものづくりを楽しみ、真摯に向き合うとても魅力的な方でした。
そんな菊池さんにしか生み出せない作品には、使ってくれる人を思う気持ちで溢れています。
この記事を読んでくださったみなさんにも、ハンドメイドならではの魅力を感じていただき、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
KIKUCHI LEATHERさんではコインケースやスマホケース、お財布にバッグ、サコッシュにぽち袋まで…250点以上の様々なレザー作品が展開されているので、ぜひギャラリーページをのぞいてみてください!